「釧路市に所在する短大として市が責任を持つべきだと判断した」。鶴間秀典市長は4月上旬の記者会見で、釧短大を存続させることを決めた理由をこう語った。
■道東に人材輩出
釧短大は1964年に開学し、幼児教育と生活科学の2学科を持ち、幼稚園教諭のほか、栄養士の資格を釧路、根室管内で唯一取得できる教育機関として、道東地域に人材を送り出してきた。地元就職率も高く、医療・福祉や教育の現場を支える役割を担ってきた。
ただ、少子化の波にはあらがえなかった。釧路市の18歳未満人口は、2026年2月末に約1万6千人と過去10年で3割以上減少。釧短大は14年度以降、定員割れが続き、昨年度の入学者は定員100人のところ67人にとどまった。運営する緑ケ岡学園(釧路市)は自力での経営継続を断念し、今春の学生募集停止に追い込まれた。
鶴間市長は当初、「赤字の短大を市が運営しても10年持つかどうか」などとして公立化に慎重だったが、存続を求める地元経済界に押し切られる形で昨年11月に方針転換した。市は来年4月の公立化に向け、3月末には釧短大の設置者を釧公大に変更し、8月にも学生募集を再開する方針だ。
短大志願者が減り四年制大学への進学が主流になっていることなどを考慮し、31年度には四年制大学への移行も検討する。さらに、学生募集の観点からも、理系学部の新設やキャンパス移転も視野に入れる。
しかし、市の試算では定員充足率が100%を維持したとしても、四年制移行前の27~30年の4年間の赤字総額は約3億5千万円に達する。市が負担しなくてはならず、定員割れが続けば負担はさらに膨らむ。
■7町村負担せず
市の財政は物価高などの影響で基金を取り崩す状況が続き、行政サービスの見直しも避けられない局面にある。短大の運営費を釧路市以外の釧路管内7町村でも分担する方向で調整したものの、鶴間市長が提示する公立化計画が二転三転したことに各町村が反発し、市単独で負担することになった。
23年に私立の短大を公立化した先行事例の旭川市立大の短期大学部では、公立化後も受験者数は増えず、定員割れが続いている。釧公大本体も近年は志願者倍率が急落しており、19年度に1.38倍だった推薦の志願者倍率は26年度に0.65倍に落ち込んだ。
大学の存続は、地域に不可欠な人材育成の拠点を守る挑戦である一方、人口減少と財政制約という現実と向き合う試金石でもある。
自治体と大学の関係に詳しい長野県立大の田村秀教授(地方自治論)は不採算部門を厳しくみた議論が必要とした上で「学費が安くなるだけではもはやメリットにならない」と指摘。帯広や北見など道東の国公立大との連携を強化することを提唱しており、「釧公大でないと学べないことを充実させ、大学の魅力向上に取り組むべきだ」と強調する。