大学生の学費値上げや生活費の高騰が保護者の家計を圧迫している。経済状況によっては、子どもの進学先を変更したり、多額の奨学金を借りたりする家庭も少なくない。特に東京など北海道外への進学には、住居費や仕送りなどの負担も重く、子どもたちの進路選択に影を落としている。
学費高騰 保護者を悩ませる道外進学
「道外に進学させるのがここまで厳しいとは思わなかった」。札幌市北区の40代女性は、高校2年の息子の進学費用を試算し、ため息をついた。志望する東京都内の私大に進めば、初年度の学費は150万円を超え、その後も家賃や仕送りが必要だ。世帯所得は約800万円と道内平均の459万円を上回るものの賄うのは厳しいという。本音は道内の国公立大に進んでほしいが、道外で広い世界を見てほしいという親心もあり、教育ローンの利用を検討する。
大学学費は全国的に値上げが相次ぐ。東大は2025年度に授業料を約10万円引き上げ、26年度以降、他の国立大も追随した。文部科学省によると、私大の授業料も25年度で平均96万8069円、初年度納付額は150万7647円といずれも前回調査の23年度を上回った。
金利上昇 卒業後に重い返済
これに伴い奨学金の利用者も増えている。日本学生支援機構によると、24年度の大学生(昼間部)の利用者の割合は51.1%を占め、90年代から倍増した。有利子奨学金の固定方式の返済利率も、2026年卒は2.423%と20年卒の0.070%から大幅に上昇。平均貸与総額336万円を20年間で返す場合、支払う利息は約2万円から約88万円になる。
札幌市出身の舞衣さん=仮名=(23)は今春、北海学園大から東北大法科大学院(仙台)に進んだ。シングルマザーの母の苦労を目にし、北海学園の夜間部を選択。昼は飲食店などで働き、返済不要な給付型と、返済が必要で利子もつく貸与型の2種類の奨学金の月計約8万円を授業料や生活費に充てた。
裁判官を目指し、進学は東京の私大も検討したが、生活費などが高いため断念した。現在も奨学金を受け、卒業時の返済額は少なくとも約560万円に積み上がる見通しだ。「奨学金とは言え、これだけの借金はプレッシャー」と語り、給付型奨学金の拡充を求める。
家賃負担軽減へ 学生支えるシェアハウス
首都圏へ進学するケースでは負担は一段と重くなる。東京地区私立大学教職員組合連合によると、自宅外から首都圏の私大に入学した学生の受験から入学までの費用は25年度で平均235万円と過去最高となった。仕送り額は平均月9万1600円で、平均家賃7万1800円を差し引くと、生活費は1日当たり660円にとどまり、アルバイトなどが不可欠な学生が大半となる。
一方、地方出身の学生を支援する動きもある。札幌市出身で東京で暮らす会社員清藤心彩さん(22)は、上京する女子学生向けシェアハウスを運営する社団法人「MORE FREE」を知人らとともに立ち上げた。
シェアハウスは個室で家賃と共益費を月計3万8000円に抑えるほか、共用部では学生が集まり課題などをこなす。
高校時代、友人が家庭環境を理由に道外進学を諦めた経緯があり、「安心して暮らせる場所をつくりたい」と4年ほど前に大学の仲間と運営を開始。女子学生は、防犯面からオートロックや2階以上などの条件を重視する人も多く、家賃を抑えにくい。
今春、入居した札幌出身の女子大学生(19)は、経済的な理由から都内への進学をためらっていたが、「決め手になったのはシェアハウスの存在だった」という。清藤さんは「地方では経済的理由に加え、いまだに『女性は地元に』という風潮がある。誰もが進学先を自由に選べる社会になれば」と話した。
■「学費の引き下げ必要」 日本大学経済学部・村上英吾教授(社会政策)
地方から首都圏への進学は年々、難しくなっている。家計に無理をして進学した学生はアルバイトに追われ、奨学金の返済を背負うことも少なくない。まず必要なのは学費の引き下げだ。私立学校振興助成法は、私大などの経常経費の2分の1を国が補助することを目標としているが、補助率は1980年度の29.5%をピークに下がり続け、2022年度には8.6%まで低下。学費高の一因になっている。
中間層でも負担を感じる家庭が増えており、奨学金や大学などへの修学支援制度の所得制限は見直しが必要だ。貸与型の奨学金は、希望者全員が無利子で受給できるようにするべきだ。首都圏の家賃上昇に伴い、仕送りに占める割合は8割近い。国などの住宅費への支援も欠かせない。