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∟●尚美学園大学カウンセラー不当解雇問題が解決

尚美学園大学カウンセラー不当解雇問題の解決についての声明
業務委託・請負など「雇用類似」契約の労働者はともに闘おう!

2023年3月31日
全国一般東京東部労働組合 執行委員会

 尚美学園大学で学生カウンセラーとして働いていた全国一般東京東部労組・公認心理師ユニオン支部の平田尚寛組合員が不当に雇い止め解雇された問題で、学園側との「和解」がこのほど東京地裁で成立した。

まずもって約1年間に及んだ解雇撤回を求める闘いにご支援いただいた友好労組や地域・全国の仲間のみなさんに心より感謝をお伝えしたい。また裁判闘争で尽力していただいた戸舘圭之弁護士にも御礼を述べたい。ありがとうございました!

「和解」の成立は2023年3月7日付で要点は次のとおり。
・学園側と平田組合員は両者の業務委託契約が2022年3月末で終了したことを確認する。
・学園側は、契約を更新せず、労働者性が争いになり、裁判になったことについて残念に思う。
・学園側は、平田組合員が6年5カ月にわたり大学の専門職カウンセラーとして勤務し大学教育に貢献してきたことを認める。
・学園側は、平田組合員に解決金を支払う。
・解決金の金額のみは非開示とし、その他の内容に口外禁止は設けない。

東部労組は今回の解決について、平田組合員との契約が業務委託だったことを理由に労働者性を否定したうえで解雇規制の対象外と主張して正当な理由も何の補償もなくクビを切った学園側に対し、実質的に一定の雇用責任を取らせたものと評価している
一方で、当初の目標だった不当解雇を撤回させられなかったこと、そして平田組合員の労働者性を認めさせるまでには至らなかったことを率直に認めなければならない。
成果と課題をともに含んだ今回の「和解」を東部労組は以下のように総括する。

成果については、第一に平田組合員自身が不当解雇に泣き寝入りせずに声を上げ続けたこと、第二に労働組合に加入して闘ったこと、第三に地域・全国の働く仲間から有形無形の支援を受けたこと、この三点があったからこそ獲得できたものだ。
特に強調したいのは憲法28条で労働者に保障された団体行動権の力である。平田組合員は解雇を通告されてから在職中にストライキをくり返し実施し、解決までに計6回にわたって学園本部前での抗議行動に打って出た。その効果は、学園側の弁護士が「裁判をやっているのだから抗議行動は控えてほしい」と組合側の弁護士に電話してきたことからも明らかだ。
団体行動権は、言うまでもなく当事者である平田組合員が勇気を奮って立ち上がらなければ行使できなかったし、同時に労働組合に加入して広範な労働者と団結しなければ行使できなかった。これが裁判だけでは得られなかった成果を獲得できた最大の要因である。

課題については、平田組合員のように実態は労働者であるにもかかわらず業務委託や請負など雇用契約以外の契約を結んで働いている人たちの生活と権利をどのように守るかということである。
力関係で圧倒的に優位に立つ使用者側(雇用主側)の意向で雇用契約以外の契約を結ばざるをえない状況が横行している。労働者性の判断基準は過去の最高裁の判例で蓄積されているが、それらが労働者の実態を十分に反映しているものとは言い難い。
現在、「雇用類似の働き方」や「雇用によらない働き方」と称して政府あげて雇用契約以外での働き方を推進している中で、業務委託や請負などの契約を装うことによって労働者を無権利状態に置く資本家・経営者が後を絶たない。平田組合員と同じ臨床心理士・公認心理師ら「心理職」の中には、このような契約を結んで働く人が少なくない。
こうした傾向に歯止めをかけようと東部労組と平田組合員は今回闘ってきたが、労働者性を認めさせるという壁を突破するには至らなかった。
どうすれば壁は突破できるのか。何よりも「雇用類似」の契約のもとで働いている(働かされている)全国の労働者が労働組合に加入し、団結し、平田組合員のようにくり返し闘いを挑むことではないか。

労働者は、生産手段を持たず、自らの労働力を資本家・経営者に売り、生計を立てるしかない。そして、必要な時だけ搾取され酷使され、必要がなくなれば路頭に放り出される。
これは「個人事業主」や「フリーランス」という立場で働いている多くの人たちも同じである。裁判所がどのように判断したとしても「雇用類似」契約で働く人たちは労働者階級の一員である。
かつて労働者は労働組合で団結することすら禁止されていた。労働者に現在ある権利はすべて世界中の先輩労働者が血と汗を流して闘い、勝ち取ったものばかりである。
業務委託や請負など「雇用類似」の契約のもとで働いている人たちも、「個人事業主」や「フリーランス」などと呼ばれて働いている人たちも、ともに立ち上がろうではないか。

8時間労働制も解雇規制も最低賃金も失業手当も労災もない、まるで19世紀の工場法成立前のような状態を強いられているあり方を変えるために声を上げよう。東部労組はその先頭に立ってともに闘う。すべての労働者は団結しよう!