京都新聞(4/14)

若者が背負う重荷の軽減へ、思い切って踏み込むことが必要ではないか。

文部科学省は、低所得世帯の大学生や専門学校生らに対する高等教育修学支援制度の拡充策を発表した。

来年度から、返済不要の給付型奨学金と授業料減免の対象となる世帯年収を、約380万円以下から広げる。子ども3人以上の多子世帯と私立校の理工農系学生は約600万円以下に緩和する。

一方、利用者が約116万人にのぼり、主流である貸与型奨学金に関しては、返済期間を長くして毎月分を減らす仕組みの年収要件を緩和するにとどまる。

経済的理由により進学や卒業後の生活のハンディを抱えることのないよう、支援を充実すべきだ。

同制度は2020年度に始まり、所得に応じて段階的に支援額が決まっている。21年度の利用者は約31万人で、今回の改正で新たに約20万人が対象となる。多子世帯は満額の4分の1程度を、理工農系は私立文系の平均授業料との差額を新たに支援する。

また、大学院在学中は授業料を徴収せずに、修了後の所得水準に応じて分割納付できる「後払い」の基準も24年秋に設ける。

貸与型奨学金は、事実上の「学生ローン」とも言われ、社会生活の出発点で若者が多額の負債を抱える弊害は、かねて問題視されてきた。

労働者福祉中央協議会の昨年のアンケートでは、借入総額は平均310万円で、返済が「苦しい」が45%を占めた。返済中の人の38%が「奨学金が結婚に影響している」と回答している。

自民党内からは「子どもを産んだら減免する」との案も一時聞かれたが、強引な少子化対策に結びつけることは許されない。望めば結婚や出産ができる環境を整えるための取り組みであるべきではないか。

自治体などの独自支援も広がっている。

京都府教育委員会は教員が府北部で10年間勤務することなどを条件に奨学金返済支援に乗り出す。過疎地の市町や人手不足に悩む中小企業でも、奨学金の返済を補助する取り組みが出ている。

高等教育機関への進学率は8割を超える。一方、親の平均収入は減少し、新型コロナウイルス禍の影響で中退者も相次いだ。

子ども政策の重要な柱として財源の裏付けを持った支援策を構築すべきだ。