日刊ゲンダイDIGITAL(4/16)

文部科学省は、2025年から私立大学新設を抑制する方針を決めた。「定員割れ」の大学が増え、半数近くになっているので、学生の確保ができるかどうかを客観的なデータや分析で示すことにした。今までは、教員の体制や教育課程などに問題がなければ新設を原則的に認めてきたが、定員割れの私大がどんどん増えているので、定員確保の裏付けを求めたのだ。

昭和では国が大学を作ることを奨励していて、私大が定員オーバーでも目をつぶることもあった。18歳人口が急激に増加して、同時に大学進学率もアップ、その受け皿づくりに懸命だったのだ。18歳人口がピークアウトした平成の時代に入っても、大学進学率は高まっており、それほど志願者は減らなかった。また女性の進学志向の変化に対応し、短大が4年制の大学に移行したこともあった。

その結果、大学は増え続けた。1956年に123校だった私大は、1986年334校、2022年に620校となった。一方、国立大は72校→95校→86校である。国は高等教育の担い手を私大に頼ったのだ。

ところが18歳人口は、200万人だった平成初期のピークから令和に入ると100万人に近づき、進学率も横ばい傾向になってきた。それでも私大は増えているのだから、定員割れが増大するのは当然だ。東京圏でも、東京女学館大学や恵泉女学園大学のように、大学部門を募集停止にするケースがでてきた。名門の青山学院女子短大も2022年秋に閉学した。別に欠員が出ている状況でなくても、将来を考えたのであろう。

■地方自治体は地域振興と若者定着を大学に頼った

半面、最近も地方の私大の新設を認めてきた。地域的なニーズがあったからだ。企業の海外進出で地方では工場の移転が目立ち、地域振興と若者定着のために地方自治体は大学に頼った。

その多くは財政の視点から経費がかかる公立大新設より学費も高く設定できる私大招致を選んだ。当初は有名私大との公私協力方式だったが、地元の18歳人口が減るうえ進学高では根強い国公立志向が強く志願者減が目立ちはじめ、私学法人が撤退するケースが続出した。その後、地方自治体”丸抱え”の公設民営の私大も生まれたが、志願増は望めず定員割れが続いて、近年はほとんどが公立(大学)化を選んだ。

また最近の地方の新設大や新学部には看護学部など医療系が多く、志願者も集めやすくニーズは高いので、認可を得やすかった。

企業の赤字と違って、「定員割れ」が続いても大学の存続がすぐに危うくなるわけではない。今後はDXのIT人材は地方にこそ必要となる。そうしたニーズに合わせたプログラムを充実できるかどうかが、受験生が集まる条件となろう。

そのためにオンラインを通じたIT教育を全国的に展開していくシステムを充実させる必要がある。国や地方自治体は、リカレント教育を含めて、そのサポートにこそ力を入れるべきだ。