Newsseek(2023年4月26日)

舞田敏彦(教育社会学者)

<18歳人口の減少や女子の短大離れから、今では大半の短大が定員割れに陥っている>

最近、大学の閉鎖のニュースが相次いでいる。恵泉女学園大学、神戸海星女子学院大学、上智大学短大部が、立て続けに学生募集を停止する意向を発表した。18歳人口減少により経営困難に陥ったためだが、女子の共学志向や短大離れの影響もあるだろう。

閉鎖決定に至らずとも、その予備軍の大学は数多い。大学経営の安定度を測る指標として、入学定員充足率というものがある。定められた入学定員のうち、実際の入学者が何%かという数値だ。この値が100%を下回る大学は、定員割れということになる。

日本私立学校振興・共済事業団の資料によると、1990年度では全国の366の私立大学のうち定員割れの大学は4.1%(15校)だった。だが2022年度では47.5%となっている。現在では、私立大学のおよそ半分が定員割れだ。短大に至っては目を覆いたくなるような事態になっている。

<図1>は、入学定員充足率の内訳がどう変わったかをグラフにしたものだ。

この30年余りで、不穏な色が垂れてきている。4年制大学では、定員割れの割合は1990年度4.1%から2022年度の47.5%に上がった(上述)。短大では同じ期間にかけて、3.7%から87.5%にまで増えている。ものすごい変化だ。今では短大の大半が定員割れしていて、地方では定員を満たしている短大を探すのは難しい。

短大は「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することを主な目的とする」機関で(学校教育法108条)、かつては女子の高卒後の主な進学先だった。1990年代前半までは、1学年あたりの女子学生数は4大より短大の方が多く、「女子の場合、就職は短大の方が有利」と言われたりしていた。

しかしその後は女子の4大志向が強まり、短大の学生数は急減。ピークの1993年では54万人だったが、2022年では10万人を割っている。<図1>の黒色は定員充足率80%未満で、閉鎖に至る可能性が高い学校とみていい。2022年度の短大の半分以上が該当する。今後、学生募集の停止を発表する短大が続々と出てくるだろう。

4年制大学も安泰ではない。進学率の上昇により学生数は増え続けているものの、個々の大学別にみると半分近くが定員割れで<図1>、入試難易度(ランク)が低い大学ではより状況は深刻だ。

横軸に入試偏差値、縦軸に定員充足率をとった座標上に、首都圏(1都3県)の161の私立大学を配置すると<図2>のようになる。偏差値はベネッセの「マナビジョン」というサイトから得た。定員充足率は、読売新聞社の『大学の実力2019』に掲載されている、各大学の学生数と定員数から算出した。

定員割れの大学(赤線より下)の多くは、偏差値50未満の大学だ。読売新聞の調査に回答していない大学には低偏差値の大学が多いが、これらを含めると図の傾向(左下がり)はもっと明瞭になるだろう。

大学の学生数は増えている一方で、定員割れの大学は増えていることから<図1>、学生が集まる大学とそうでない大学の「階層分化」が進んでいるとも言える。<図2>のグラフは、その可視化に他ならない。

大学や短大は、時代のニーズに合った姿へと変身を遂げなければならない。文科省は、STEM(科学・技術・工学・数学)人材を育成する理系学部への転換を支援する方針を打ち出ているが、少子高齢化という人口変化を考えると、成人層の知識・技術の再訓練や、学び直しへの欲求に応えることも必要になる。短大は4年制大学にくらべて、地方への分散の度合いが高く、地域のコミュニティ・カレッジの機能も期待される。

目を凝らすと、大学や短大は豊富な人的・物的資源を擁している。それを振り向ける対象は、やせ細っていく18歳人口だけではない。