■朝日新聞デジタル(2023年5月18日)

日本を代表する研究機関の理化学研究所(本部・埼玉県和光市)で今春、10年を超える有期雇用を認めない「10年ルール」の結果、雇い止めにあった研究者や技術職員が計97人にのぼることがわかった。理研労働組合が18日、厚生労働省で会見を開いて明らかにした。全国の大学や研究機関で計数千人が雇い止めになる可能性が指摘されていたが、機関ごとの実数が公表されたのは初めて。

2013年4月に施行された改正労働契約法などにより、有期雇用が通算10年を超えた研究者は無期への転換を求められるようになった。雇う側はこの求めを断れないため、人件費削減などを背景に、通算10年を超える直前に契約を打ち切られる研究者が多数出ることが懸念されていた。

理研の研究系の職員はもともと有期雇用が約8割を占める。16年には、13年にさかのぼって雇用期間が通算10年を超える契約はしない、と就業規則を変更した。昨年9月にこの上限の撤廃を発表したが、今年3月末で通算10年にあたる研究者らが203人いることがわかっていた。

労組が理研側に3月末以降の実態を聞き取ったところ、このうち97人が4月以降の雇用を結べず、理研を退職したことがわかったという。大学の教授職に相当する、チームリーダーと呼ばれる研究者も複数いた。

一方、理研は一部の研究者については「理事長特例」などとして4月以降も計106人の雇用を継続した。中には降格された上で、雇用継続となった研究者もいる。

このほか、リーダーの雇い止めで研究チームが廃止になることで、雇用契約が終わる研究者らも177人おり、別のチームなどに移籍できなかった87人が理研を去った。

……