zakzak(2023.2/16)

札幌国際大(札幌市清田区)に教授として勤めていた大月隆寛氏(63)が、大学の運営方針を批判する城後(じょうご)豊前学長(76)の記者会見に同席したことなどを理由に不当解雇されたとして、学校法人に地位確認を求めた訴訟の判決で、札幌地裁は16日、「合理的な理由を欠く」として解雇は無効と判断した。

中野琢郎裁判長は判決理由で、大月氏は会見に同席したものの「主体的に意見を述べたことはなく、積極的に協力したとはいえない」と指摘。就業規則が定める懲戒事由には該当しないとした。

判決によると、大月氏は2020年3月31日、城後氏の会見に同席。城後氏は大学が留学資格として求められる日本語能力を満たさない外国人留学生を多数受け入れていると主張した。同年6月、「名誉を毀損(きそん)する会見に同調した」などとして懲戒解雇を告げられた。

判決後、大月氏は会見し「全面勝訴といっていい。法人は控訴ではなくガバナンス(組織統治)の改善に注力してほしい」と話した。法人側は「判決文を精査する」とのコメントを出した。

大月氏は22年3月、教員の定年である63歳を迎えた。判決では再雇用された教職員としての現在の地位も認められた。

以下は大月氏の一問一答。

--現在の心境は

「長かったというのが第一だ。直前まで、最悪の事態も考えていたほど。裁判所に常識的範囲で判断していただけたのは、非常にありがたかった。自分事だけでなく、城後前学長の名誉回復でもあり、その意味でも良かった」

--勝訴した理由をどう考える

「前学長の記者会見に同席し、ツイッターなどでも『内部情報を漏らした』というのが大学側の解雇の主な理由だったのに、会見で私が実際に何をしゃべったのかなどについて被告大学側が証拠を全く出してこなかった。何もエビデンスのないまま、解雇されたに等しかった。どこかの党の論理に似ている。大学だけではなく、日本の組織自体に、同じようなことが起きているのではないか」

--解雇から約2年半、最も大変だったことは

「やはり金がなかったことが一番だ。また、いきなり大学で教えるルーティンがなくなると、人とも話さなくなり、気持ちが落ち込んだ」

--大学側に伝えたいことは

「地域で50年以上続く大学なので、地元の信頼に応える意味でも、全面的に刷新するくらいのことも考えて一から再出発してほしい。全国の大学で同様の『不当解雇』の問題が発生しているが、自ら腹くくって戦わなければ、守るものも守れなくなった時代だと思う」

--来年3月に(再雇用後の)定年を迎える。今後の取り組みは

「大学側が控訴するか、出方次第だ。今すぐにでも大学に戻り、来年3月の定年まで教壇に立ち続けたい。学生たちにも謝りたい。4月から授業できるよう準備だけはしておく」