LIMO(2/17(金)

入試制度の多様化で年内に進学先が決まる受験生も増えていますが、国公立大学の二次試験を控え、大学入試も佳境を迎えようとしています。

【グラフ】仕送り額の推移を30年以上前から確認。明らかな減少傾向が

新年度から実家を離れ1人暮らしをスタートするとなると、下宿先を探したり家電や家財を一式そろえたりと、何かと出費がかさみます。

そして、親が気になるのは「毎月どのくらいの仕送りが必要か」ではないでしょうか。

今回は、1人暮らしをする新入生にかかる費用や、今と昔の大学生の仕送り額の変化と学費について考えていきます。

首都圏の私立大学に入るときにかかるお金

東京私大教連(東京地区私立大学教職員組合連合)では、1985年度より「私立大学新入生の家計負担調査」を実施しています。

1都3県の短期大学を含む大学に入学した学生の保護者を対象に行われた2021年度の同調査で、自宅外通学者の受験から入学までにかかる費用は223万円と、過去最高を記録する結果となりました。

内訳は以下の通りです。

・受験費用 25万4000円
・家賃 6万6000円
・敷金礼金 23万5300円
・生活用品費 32万700円
・初年度納付金 135万7080円(文部科学省「令和3年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)」による)
さらに、4月から12月の仕送り総額79万5600円が加わると302万9000円に上ります。

調査対象者の世帯年収平均は972万3000円です。

首都圏の私立大学に進学して1人暮らしをした場合、初年度にかかる費用は世帯年収の3割を占め、家計への負担も大きく捻出するのにかなり苦労する額になっています。

首都圏の私立大学進学者への仕送り

30年以上にわたり行われている「私立大学新入生の家計負担調査」から、仕送り額は過去に比べると低空飛行が続いていることも分かっています。

一般的に、新生活や教科書代などで仕送り額は入学直後の4月5月に多くなり、6月からは一旦落ち着きます。

5月と6月以降の仕送り額の推移を比較してみると、30年以上前と比べて明らかに減少しています。

5月の仕送り額
・1986年度 11万2400円
・1995年度 15万1200円
・2000年度 14万5100円
・2005年度 12万4100円
・2010年度 10万8600円
・2015年度 10万1800円
・2018年度  9万9700円
・2021年度  9万6100円
6月以降の仕送りの平均額
・1986年度 10万3000円
・1994年度 12万4900円
・2000年度 11万9300円
・2005年度 10万1400円
・2010年度  9万1600円
・2015年度  8万5700円
・2018年度  8万3100円
・2021年度  8万6200円
どちらもピークは1990年代半ば、減少したのが2000年代に入ってからです。

ピーク時と比べると3割近くも減少しています。

そして、この動きは首都圏のみの話ではありません。

仕送りの全国平均額も20年前より約2.5割減

日本政策金融公庫が2000年度から実施している「教育費負担の実態調査結果」をみると、2000年度の同調査では自宅外通学者への仕送りの平均額は年129万2000円、月額10万8000円でした。

一方、2021年度の調査では仕送り額は95万8000円、月額7万9000円と20年前よりも毎月の仕送りが約3万円減少していることが分かりました。

大学進学率は上昇し、全入時代と揶揄されることもありますが、子どもを支援しようにも思うようにできない親、そして一人暮らしをする学生にとって厳しい状況となっています。

仕送り額の減少の要因として考えられるのが、大学の学費の上昇です。

文部科学省の「国立大学と私立大学の授業料等の推移」をみても、昭和後期の国公立大学の授業料は30万円、私立大学は55万円を切る程度でした。

もちろん、当時と今の物価の違いもありますが、デフレにより給料がなかなか上がらない中でも大学の学費は上がり続けています。

2000年の国立大学と公立大学の授業料は47万8800円、私立大学は78万9659円、そして2021年は国立大学53万5800円、公立大学53万6363円、私立大学は93万943円と増加しています。

20年の間で国公立大学の授業料は約6万円、私立大学では15万円上がっています。

アルバイトでカバーも限界がある

上がらない給料、そして物価上昇や光熱費の値上がりと仕送りする側もやり繰りをしても、思うような金額を渡せない状況が続いています。

アルバイトで生活費や学費をカバーしようにも、フルで働いてしまえば学業に支障をきたします。

奨学金制度を利用することも検討すべきですが、日本では返済無用の奨学金は限られており、社会人になってから返済するのが一般的です。

仕事を始めてから一定の金額を返済する仕組みになっており、筆者も経験者の一人ですが思いのほか負担がかかります。

申請する際は、社会人になってからの返済パターンもしっかり確認するようにしてください。

大学進学は本来は祝うべきことです。

しかし、自宅外通学の場合は自宅通学以上にお金がかかります。

親子でどのくらいかかるかシミュレーションをし、仕送り額やアルバイトでどのくらい稼ぐ必要があるか話し合いを重ねましょう。
参考資料

・東京私大教連「私立大学新入生の家計負担調査」
・東京私大教連「私立大学新入生の家計負担調査」
・日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(2000年度)
・日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(2021年度)
・文部科学省「国立大学と私立大学の授業料等の推移」