東北大学職組新聞(2023年2月28日)

非正規雇用職員、特に研究職員については、科学技術・イノベーション法、大学教員等の任期法の特例によって、今春3月末に、雇用継続が10年を超えて無期転換権が発生する直前に、大量に雇止めされようとしています。文科省調査(2023年2月発表)では、このような研究職員は12137名であり、そのうち4997名が行き先未定とのことです。問題の大きさがこの数字からも伺い知れます。

本集会は、この大量雇止め発生直前の状況を打開するために、本問題の新たな課題について現場間の情報共有を行うこと、そして国に行動を促すことを目的として開催されました。

一般社団法人「科学・政策と社会研究室」榎木代表理事からの趣旨説明のあと、事例報告として、理化学研究所、大阪大学、東北大学、東海大学、専修大学、鈴鹿大学、愛知淑徳大学、羽衣国際大学、早稲田大学、日本大学から、雇止めの実態とそれに対する組合の取り組みが紹介されました。私も、東北大学の
10年雇止めの状況と不合理な裁判・判決文を報告しました。

報告の最後に、2021年度・男女共同参画学協会連絡会大規模アンケート調査結果が紹介され、継続雇用年数が5年10 年を超えた任期付き教員・研究員は2016年には全体の半数以上を占めていたのに、2021年には一気に数%に減少したことが明らかになり、一同驚きをもって本問題の影響の大きさを知りました。

全体を通して、これまで指摘されていたように、日本の科学技術の研究力の低下・損失、労働者の使い捨てを進めてしまう制度不備を、現場から改めて確認できたとともに以下のような新たな課題が示されました。

非常勤講師が次々と雇止めされているのですが、これは今年度に大学設置基準で新たに定めた「基幹教員」による講義の掛け持ちを展開するために、無期
転換講師の存在は「邪魔」となるという側面です。

もう一つは、アフター無期転換問題です。雇止め対象者が雇用継続との引き換えに、新たに任期を付した契約を強要される事例。無期転換後に講義担当をゼ
ロにして、業務無し=給与無しという状態にする事例。既に多くの大学で、講義の担当から外して、それを理由に雇止めすることが行われており、新たな形で「無期転換逃れ」が広まっていることがわかります。

いずれのパターンにしても、労契法改正によって、明らかに大学・研究開発法人の教職員、研究員の雇用は不安定になっています。何らかの予算的措置を行うことによって、使用者側の「人件費抑制」呪縛を解かないと、この使い捨て連鎖は終わらないと思いました。

(執行委員長 片山 知史)