朝日新聞デジタル(2023年5月10日)

A-stories 研究者を「使い捨て」にする国

研究室には、ところ狭しと装置や器材がならんでいる。

かつては7~8人の共同研究者が行き来していたこの部屋に、いまは自分1人だけが残された。

「野球チームが解散して、監督1人で試合をするようなもんです」

60代の男性研究者はこの3月末まで、理化学研究所のチームリーダーだった。有期雇用の契約が通算10年を超えることを理由に、一度は雇い止めを告げられた。

ところが「雇い止めは不当だ」と理研を相手取って裁判を起こした後、理研は方針を変えた。

理事長特例により、「上級研究員」として2年間、契約が延長されることになった。

研究室は継続して使うことができ、研究をサポートしてくれる技術支援員の2人も引き続き働ける。

それでも研究チームは解散となり、まったく畑違いの研究チームに配属された。人手がない分、実験にはこれまでの2倍も3倍もの時間がかかるようになる。降格されたので、給料も3割減った。

……