「週刊現代」2022年12月3日号

京都の超名門女子校・平安女学院に異変…「強権理事長」のパワハラで学校崩壊へ

京都を代表する「お嬢様学校」が揺れている。理事長のパワハラや教職員による密告など、教育の場にふさわしくない権力闘争が繰り広げられている。歴史ある女子校に何が起きているのか――。

反抗した者は許さない

「理事長の理不尽な『パワハラ』で学校は大混乱に陥っています。突然、副校長や教頭が役職を外されて、生徒指導やカリキュラムなどが機能しなくなっている。

その上、少しでも不満を漏らせば、誰かが理事長に『密告』する恐れもある。とても生徒たちを教育できるような環境ではありません」

こう訴えるのは、古都・京都の中心地で147年の歴史を紡いできた、学校法人・平安女学院(以下、平女)に勤める50代の現役教職員だ。

幼稚園から短大・大学まで備わったキリスト教系の女子校で、日本で初めてセーラー服を制服に採用したと言われている。キャンパス内に建つ有栖館は、かつて皇族だった有栖川宮の旧邸だ。

そんな皇族ともゆかりが深い超名門女子校が、「学校崩壊」の危機にある。良家の子女が教育を受ける場として、そぐわない泥沼の内紛が繰り広げられている。

事の発端は、’21年3月に行われた高校の卒業式での出来事だ。学院長を兼任する理事長の山岡景一郎氏(92歳)が、式辞でこう述べた。

「世の中におったら害になる人」

〈世の中には5種類の人間がいますね。1人は世の中にどうしてもあってほしい人。2番目は、どちらかというと、いてほしい人。3番目は、世の中にいてもいいひんでもいい人。4番目は、世の中におったらあまりよくない人。5番目は、世の中におったら害になる人。さて、どれが1番いいでしょう? それは1番目の「世の中に必要な人」だと私は思っています〉

人間をランク分けするような発言はキリスト教精神に反するとして、この式辞は物議を醸した。

’21年5月には、今井千和世校長や副校長、教頭が中心となり、理事長に式辞内容について説明を求めた。ところが、理事長は回答しないばかりでなく、校長に自宅待機処分を下してしまう。

「さらに、副校長、教頭ら4人に対して『役職解任』が告げられました。その約1週間後には、学院の名誉を傷つけたとして校長に懲戒解雇が言い渡されたのです。すぐさま校長が解雇無効を求めて訴え出たことで、旗色が悪いと感じたのか、山岡理事長は校長たちへの処分を撤回しました。

いったん騒動は収まったかのように思えましたが、むしろ逆。自分の意にそぐわない教職員に対するパワハラがいっそう苛烈になったのです」(30代の現役教職員)

そもそも、この山岡氏という人物は何者なのか。

「経営コンサルタントや出版社の代表取締役も務めるプロ経営者です。財政難に陥った平女をテコ入れするため、’03年に学園長・理事長に就任しました」(地元紙記者)

誓約書に書かれた内容

そんな山岡氏は式辞騒動後、「強権統治」をさらに加速させていく。

特に、校長や校長と親しくしている教職員に対して度を超えたパワハラを行うようになったという。

「たとえば、校長室を何度も引っ越しさせるんです。ある日突然、理事長が『今日からここは院長室や。出てけ』と言い放ったそうです。別の日には、『校内にある相談室を校長室にしろ』と言われたと聞きました。

また、他の教職員に対しても気に食わないことがあると『訴える』『クビにするぞ』と脅してくる。実際に、『お前は今井(校長)についているんだろう』と言われ、(大阪にある)高槻キャンパスに飛ばされた教職員もいます」(40代の現役教職員)

’22年度に入ると、理事長に式辞の内容説明を求めていた副校長と教頭が役職から外れてしまう。

定年を迎えて、1年ごとの契約になっていた今井校長は再任されるも、「誓約書」に署名させられた。 〈平安女学院中学校・高等学校校長再任についての誓約書〉と題された紙に書かれた内容を一部抜粋しよう。

〈2022年度の平安女学院中学校・高等学校教職員人事については、山岡理事長のもと、学校法人立命館より出向された羽田澄氏と相談して決定することに異議を唱えず、協力を致します。なお、従来の校長業務は、羽田澄氏に移管致します〉

まるで「スパイ組織」

羽田澄氏とは、現在の副校長だ。この誓約書について、別の現役教職員は、こう嘆息する。

「『従来の校長業務は、羽田澄氏に移管』とあるように、今井校長から仕事を取り上げようとしている。学校内で校長が担う様々な業務について口を出すな、ということです。ただ、40年以上学院に勤めて、労働組合の幹部も務めたことのある今井校長と違い、学院に来たばかりの羽田氏は右も左もわかりません。仕事の相談に行っても『わからない』としか言えない。仕方なく校長に相談すると、『今井校長のところには行くな』と理事長の側近である学院長付参与から言われてしまう。これでは業務が回りません」

こんなゴタゴタが内部で続けば、学校に通う少女たちの将来にも影響を与えかねない。この事態に多くの教職員がストレスを感じているが、互いに相談し合うことすら難しいという。

「10月に学院長付参与から、『教育構想委員』という役職を設置したと公表されました。委員長のほか4人の委員がいるようなのですが、1人を除いてメンバーは非公表になっている。

以前から校長や教職員は、理事長から『学校の中には私の協力者がいる』と聞かされています。だから、『教育構想委員』とは理事長に様々な情報を伝える『スパイ組織』なのではないかと囁かれているのです。誰もが互いに疑心暗鬼になり、何も話し合えないようになっています」(同前)

後編記事『【独自】京都の超名門女子校・平安女学院に異変…「強権理事長」に飛び出した持続化給付金の「不正受給疑惑」』では、内部告発によって出た持続化給付金の不正受給についての話や、それに対する理事長の受け答えなどについて紹介する。

「週刊現代」2022年12月3日号より