<社説>北大の研究審査 軍事への歯止め明確に

 軍事と民生の両面で応用できるデュアルユース技術の研究について、北大は軍事・防衛を所管する公的機関から資金提供を受ける際の事前審査制度を新設した。
 北大は「軍事利用に限定した研究」は行わないとし、研究の自由が確保できるかなどを審査して可否を判断する考えだ。
 しかし近年、最先端技術の研究は軍民融合が進み、はっきりとした区分けが難しくなっている。
 資金提供元は防衛省など関連機関を想定しているとみられる。ならば審査で妥当性が認められたとしても、軍事利用につながる可能性は排除できまい。
 戦後の大学や学術界は、科学者が軍事研究に動員された先の大戦の反省に立ち、軍事と一線を画してきた。北大はその原則を維持するとともに、軍事研究への歯止めを明確に打ち出すべきだ。
 審査は文系、理系、医学系の大学院教授と理事らでつくる委員会が担い、民生研究への寄与、研究の自由や成果の公開性、民生以外への利用想定などを基準とする。研究開始後も随時審査するという。
 審査基準の曖昧さは否めない。手続きの詳細を対外的に明らかにしていない点も問題である。審査の妥当性は十分に担保されるのか。学内で懸念が広がっているというのも当然だろう。
 北大は新制度導入の理由について、研究の国際化が進む中で資金の透明性確保を求めた2021年の政府方針に基づいたとする。
 16、17年度には防衛装備庁の助成を受けたことで、日本学術会議から批判を受けている。
 デュアルユースなどを巡っては名古屋大や琉球大などが既に方針を示している。軍事・防衛所管の公的機関からの資金で研究は行わないと定め、資金の出所を基準として判断する姿勢を明確にする。
 政府は敵基地攻撃能力の保有や防衛費の大幅増を目指し、安全保障関連の研究推進に前のめりだ。
 昨年成立した経済安全保障推進法は、人工知能(AI)や半導体、ドローンといった先端技術の研究開発支援を盛り込む。政府側の国会答弁では、研究成果が防衛装備品に活用され得ると認めた。
 そもそも、こうした先端技術は軍事への応用がたやすい。それだけに大学での研究活動が軍事領域になし崩し的に踏み込んでいかないか、不安が拭えない。
 04年の法人化以降、国立大の予算は激減した。政府が果たすべきはひも付きではない資金を提供し、研究の自由を保証することだ。