東北大学職員組合
∟●東北大学雇止め訴訟 仙台高裁判決に対する原告・弁護団声明

東北大学雇止め訴訟 仙台高裁判決に対する原告・弁護団声明

2023年1月25日

原告
東北大学雇止め訴訟弁護団

1 本日、仙台高等裁判所第3民事部(瀬戸口壯夫裁判長)は、東北大学の非正規職員(有期労働契約者)として12年にわたり契約更新を繰り返して勤務継続していた原告が、2018年3月31日に東北大学が行った雇止めは無効であるとして地位確認等の請求をしていた訴訟の控訴審(令和4年(ネ)第257号)において、「控訴棄却」との判決を言い渡した。
本事件の一審である仙台地方裁判所第3民事部(髙橋彩裁判長)は、原告の請求を棄却するとの判決を言い渡したが、控訴審はこれを追認したものであって、極めて不当である。

2 2013年4月に施行された労働契約法18条は、有期労働契約者の雇用の安定を図り、有期労働契約者が人間らしい生活を営むことができるようにとの趣旨から、通算5年を超えて有期労働契約が継続した場合において、当該労働者が無期契約の申込みをしたときに使用者はこれを承諾したものとみなすという、いわゆる無期転換ルールを規定した。これによれば、原告は、2018年4月1日に無期転換権を行使して無期労働契約になることができた。
これに対して、東北大学は、それまで実質的に更新上限(3年)を超えての契約更新を繰り返していたにもかかわらず、2014年4月に就業規則を変更して「5年上限」規定を定め、かつ、その適用を2013年4月に遡らせて無期転換権が発生する前に雇止めする方針を打ち出し、2018年3月31日に原告を含む有期労働契約者300名以上を雇止めしたのであった。
このような東北大学の雇止めは、無期転換ルールの趣旨目的を潜脱する目的(無期転換権発生回避目的)で行われたものであって、明らかに社会正義に反し、原告ら有期労働契約者の尊厳を踏みにじるものであった。
本訴訟は、このような東北大学雇止めが許されるのかを正面から問うものであった。

3 一審判決は、「無期転換申込権の発生を回避することを目的とした雇止めをしたことをもって、直ちに労働契約法に抵触するものではない」としたほか、「謝金業務」を労働契約と認めないなど、形式的な判断で契約更新の合理的期待を否定するものであって、極めて不当な内容であった。

4 本日言い渡された控訴審判決は、一審判決の不当性を上塗りするものに過ぎない。
控訴審判決は、「控訴人が主張する同法18条の脱法行為(専ら法の潜脱を意図したとしかいい得ないような異常ないし不自然な態様によって法を免れる結果をもたらしている場合)ないし公序良俗違反に当たると認めるには足りない。」(5頁)と判示した。しかし、原告のような長年にわたって反復更新してきた有期契約労働者について、例外のない5年の更新上限規定を設けて、かつ、それを1年遡って適用させる措置が労働契約法18条の脱法行為にほかならないことは証拠上も明らかであり、控訴審判決の上記判示は同法の趣旨を逸脱し、脱法行為を容認する極めて不当なものである。
控訴審判決は、労働契約法19条についても、労働者救済の余地を著しく狭める解釈をしており、労働者の雇用継続を認める裁判例が積み上げてきた中で制定された労働契約法の目的を理解していないものであった。
控訴審判決によれば、少しでも担当業務を変更しさえすれば合理的期待は否定されることになる。
「謝金業務」についても、控訴審判決は、雇用契約であるとの認識を示しながら、契約更新の合理的期待を否定する事情と位置づけており、不当である。

5 原告及び弁護団は、仙台高裁判決には到底承服できないため、その是正、そして有期契約労働者の権利保障の実現を求めて、最高裁で引き続き闘う。

以上