毎日新聞(2/23(木)

広島大学病院の医師が利益相反の観点から問題がある行為をしていたとして謝罪する広島大の田中純子副学長(左)ら=広島市南区の広島大で2023年2月22日午後3時1分、矢追健介撮影

広島大は22日、大学院医系科学研究科の寄付講座に絡み、担当した同大学病院の男性医師が特定の製薬会社の薬の使用を院内で働きかける利益相反上の問題があったとする調査結果を発表した。この製薬会社は講座に3年間で計4500万円を寄付していた。広島大は「違法行為はなかった」としたが、「病院の社会的信頼を低下させ、利益相反の観点で問題」と判断。同日付で医師を停職2カ月の懲戒処分とし、医師は辞職願を提出、受理された。

報告書によると、医系科学研究科は18年度から糖尿病の治療薬を製造する製薬会社など4社から年計2400万円の寄付を受けて糖尿病・生活習慣病予防医学講座を開始。同社はうち年1500万円を寄付した。男性は17年11月ごろ、医薬品を決める薬事委員会の委員長だった教授に、寄付を理由に大学病院で同社の薬を採用したいと相談。18、19年にはスタッフに同社の薬を使うようメールで促すなどの行為もした。大学病院の薬事委員会は19年12月、院内での採用を決めた。

調査会は、医師の行為は利益相反に対する配慮が不十分だったと判断。薬事委員会の対応でも、採用依頼書が提出されず口頭で進められたという手続き上の問題を指摘した。ただ、この薬が以前使用されていた薬と同一成分で患者の負担額も変わらず、管理上の利便性もあるなどとして採用を取り消す必要はないとした。

同大は当時の病院長と薬事委員長を厳重注意とした。田中純子副学長は記者会見で「心よりお詫びする。再発防止策を徹底して信用回復に努める」と謝罪した。