読売新聞オンライン(3/25)

文部科学省は、教員を養成する大学に教授などとして、小中高校長OBや現職教員を一定割合以上、配置するよう義務付ける方針を決めた。教員経験者が仕事の魅力や学校の様子を伝えることで、学生に仕事の具体像をイメージしてもらう。深刻化する教員のなり手不足の解消や若手の離職防止を狙う。

【グラフ】25歳未満で離職する教員が増えている

文科省は今秋、大学設置基準を改正し、教員養成を目的とする教育学部などの教授らのうち、小中高校の教員経験者を「2割以上」にするよう国公私立大学に義務付ける。2026年度以降に学部の新設や組織改編をする大学が対象となる。現在、国立大の教員養成学部では、教員経験のない研究者らが目立ち、現場での経験に基づいた授業のできる人材が不足している。教員経験者らの割合は16・1%にとどまる。

教授や准教授などとして起用する教員経験者は、元校長や元教頭、現職の管理職らを想定している。大学では、学校生活や部活動への関わりなど自身の経験を踏まえ、学習や生活指導の実践的なノウハウを教える。また、人脈を生かして、学校で働く教員を呼んだり、学校に連れて行ったりして、教育実習以外にも現場を知る機会を増やす。文科省は、教員OBなどから現場や仕事の具体像を学び、魅力を知ることで、卒業後に教員として就職する学生を増やしたい考えだ。

一方、仕事の負担感や保護者対応の難しさといった、現場が抱える課題も学生に知ってもらう。理想とのギャップなどから離職する若手が少なくないためで、25歳未満で離職した公立小中高校の教員は18年度、790人で、12年度の647人から増加している。同省は、教育理論だけでは分からない苦労や実態を学生の段階で知ってもらうことで、教員になってからの早期離職を防ぎたい考えだ。

文科省は「最新の学校事情に詳しい人材が教員養成に関わることの意義は大きい。理論と実践に精通した教員出身者の活躍に期待したい」としている。

近年、教員は過酷な労働環境にさらされているとのイメージが広がり、教員不足が深刻化している。教員採用試験の受験者は減っており、公立小学校の13年度採用試験で受験者は約5万8100人だったが、22年度は3割減の約4万600人となった。22年度は、採用倍率も2・5倍と過去最低だった。文科省の統計によると、うつ病など精神疾患による病気休職者は21年度、過去最多の5897人だった。このうち20歳代の若手教員は1164人だった。