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声 明

1 はじめに

大阪高等裁判所第7民事部(冨田一彦裁判長、上田卓哉裁判官、前原栄智裁判官)は、本日、羽衣国際大学の非常勤講師として3年間、専任講師として6年間勤務していた控訴人が雇止めされた事件について、控訴人は無期雇用への転換を認めて、地位確認請求と賃金請求を認容する勝訴判決を言い渡した。

2 事案の概要と本判決の意義

控訴人は、学校法人羽衣学園(以下「学園」)が運営する羽衣国際大学の人間生活学部・人間生活学科・生活福祉コースの非常勤講師として2010年4月から1年間の有期労働契約で更新2回合計3年間勤務した後、2013年4月からは専任講師として3年間の有期労働契約を締結した。2016年4月からさらに3年間の契約更新を行い、通算期間が5年を超えたことから、2 018年11月に労働契約法18条1項に基づいて無期転換を申し込んだ。ところが、学園は大学教員等の任期に関する法律(以下「任期法」という。)7条1項の「10年特例」の適用を主張して無期転換を否定した上で、2019年3月末で雇止めを行った。
労働契約法18条1項は、有期雇用労働者の雇用の安定をはかるため、有期労働契約が通算5年を超えて更新されている場合には、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換することを定めている。他方、任期法4条1項1号は、「先端的、学際的又は総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性に鑑み、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職」に就けるときには、無期転換までの通算期間を5年ではなく1 0年とすると定めている(「10年特例」)。
本判決は、任期法の「10年特例」が適用されるためには、多様な人材の確保が特に求められる教育研究の職であることが具体的事実によって根拠付けられていると客観的に判断しうることを要するとした。控訴人は介護福祉士養成課程を担当するために必要な経歴と資格等を有する人材として採用されたものであり、人材交流の促進や実践的な教育研究のために実務経験を有する人材が求められていたものではないことから、「10年特例」は適用されず、原則どおり、労働契約法18条1項によって、控訴人は無期労働契約に転換したものと判断した。
本判決は、労働契約法18条1項の例外である「10年特例」の恣意的な運用が許されないことを明確に指摘した点で意義があり、有期雇用の大学教員の雇用安定を促すものとして高く評価することができる。

3 学園が本判決を重く受け止めて、上告することなく、本判決にしたがって、控訴人を直ちに無期雇用の専任講師として職場に復帰させることを強く求めるとともに、本判決を契機として、任期法の「10年特例」の恣意的な運用に歯止めがかかり、労働契約法18条1項の本来の趣旨である有期雇用労働者の雇用の安定が図られることを期待する。

以上
2023年1月18日

弁護団
羽衣国際大学教職員組合
羽衣国際大学K先生を支援する会大阪労連堺労働組合総連合
関西地区私立大学教職員組合連合