読売新聞オンライン(2/17(金))

政府は17日午前、私立大学などを運営する学校法人のガバナンス(組織統治)を強化する「私立学校法改正案」を閣議決定した。今国会に提出し、2025年4月の施行を目指す。日本大学などの私大で不祥事が相次いだことを踏まえ、学校法人役員に対し、「特別背任」、「贈収賄」、「目的外の投機取引」、「不正手段での認可取得」の罰則として刑事罰を新設する。

最も重い特別背任行為には「7年以下の拘禁刑か500万円以下の罰金、またはその両方」を科す。刑法の背任罪で定める「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」より重く、一般社団法人の制度と同程度の法定刑とした。拘禁刑は25年に施行する見通しの改正刑法で導入される。

理事会をチェックする評議員会の権限も強化する。評議員会に理事の解任を請求できる権限を与える。重要事項決定の際には評議員会の決議を必要とする規定も盛り込んだ。

現行制度では、理事長の意に沿う人物を評議員会などにそろえることが可能で、理事会の決定を監視することが難しかった。このため、理事・監事の親族で評議員に就任できるのは各1人に制限し、親族の評議員は全体の6分の1以下とする。理事・監事と、評議員の兼務も禁止する。

日大の背任事件など一連の不祥事は、元理事長の「専制的な体制」が原因とされた。学校法人は税制優遇などを受けており、ガバナンス改革の必要性を指摘されていた。

私大ガバナンス強化へ改正法案閣議決定 評議員会権限強化

産経新聞(2/17(金))

政府は17日、私立大などを運営する学校法人のガバナンス(組織統治)強化に向けた私立学校法改正案を閣議決定した。各法人に置かれた諮問機関の「評議員会」について、執行機関の「理事会」に対するチェック機能を強化することなどが柱。大学や短大を運営する法人の場合、合併・解散といった重要事項の議決権や理事の解任請求権を評議員会に認め、理事らの背任行為や贈収賄には罰則を設ける。今国会での成立を目指す。

現行では学校法人の合併・解散、予算、決算などの重要事項の決定に理事会のみが議決権を持つが、改正案では合併や解散などについて評議員会の決議を義務付け、理事会へのチェック機能を高める。これまで理事会の意向が強く働いてきた理事の選任・解任でも、評議員会の権限を強化。役員選考会議など各法人に設けられた選任機関が理事を選ぶ際には、評議員会からの意見聴取を義務付ける。不祥事があっても理事が辞めない場合を想定し、評議員会に解任請求権を与える。

現行制度で認められている理事と評議員の兼務は禁止する。また、不祥事防止に向けて、理事らによる背任行為や目的外の投機取引、贈収賄、不正な認可取得への罰則を新設する。

私立大のガバナンスを巡っては、国内屈指の規模を誇る日本大の元理事長らによる刑事事件などを受けてクローズアップされ、強化の方向性が注目された一方、議論には紆余(うよ)曲折があった。令和3年には文部科学省の有識者会議が評議員会を最高監督・議決機関に格上げし、理事の選任・解任権などの付与を軸とする改革案をまとめたが、私学団体側が猛反発。文科省が別の検討組織を立ち上げて議論を仕切り直し、昨年、評議員会の格上げを見送る方向性を打ち出した。