日経ビジネス(2023.4.14)

藤田 太郎
日経ビジネス記者

留学生を使った大学の「定員充足率」向上策をきっかけに、北の大地でお寒い騒動が勃発。18歳人口の減少で揺らぐ教育の現場。日本が直面している課題の一端を見たにすぎない。
前学長が開いた記者会見に同席したなどとして懲戒解雇された大月氏。当時は札幌国際大学人文学部の教授だった(写真=川村 勲)

「何とか大学を正常化したかったのだが、志半ばで懲戒解雇されてしまった」。札幌国際大学(札幌市)で人文学部の教授だった大月隆寛氏は、校舎を見上げながら、唇をかんだ。

同大学は観光学部やスポーツ人間学部などに特色がある4年制の大学だ。在籍する学生数は約1600人。日本人学生の多くが道内の出身だ。そんな地域密着型の大学で騒動が起きたのは、2019年のことだった。

発端は留学生の大量入学である。「授業を受けられる日本語能力のレベルにない外国人留学生が相当数いる」。入学直後の留学生のクラスを受け持った教員からそんな悲鳴が上がった。観光学部に入ったのに、日本語の「観光」の意味が分からない──。そんな状況だったという。
中国で現地入試、合格率9割

実は、札幌国際大学では一部の学科を除いて定員割れが続いていた。定員充足率が65%だった18年、理事会は国際化を掲げ、留学生を毎年80人以上受け入れることを決めた。19年度の春学期入試では中国の複数の都市で入試を開催し、約40人が入学した。明確な合格基準点がなく、合格率は90%以上に達した。

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