日刊ゲンダイDIGITAL(4/10)

文科省が私立大に対する審査を厳格化する。大学や学部の新設の抑制が狙いとみられ、3月に審査基準の一部を改正し、2025年度以降に開設する大学から適用されることが分かった。

新たに加わった審査基準は、①新設する大学の地域的なニーズや18歳人口の推計値から、入学希望者がどの程度集まるかを分析すること、②近隣の競合校の定員充足率はどうか、③学生募集のための計画やその効果などだ。しかし、裏を返せば、文科省の大学設置・学校法人審議会は、この程度の審査をすることもなく、教育課程や施設などに法的な問題がなければ認可してきたわけである。

今回の大学・学部の新設抑制の背景には、少子化などの影響で、入学者数が入学定員を下回る「定員割れ」大学が増えたことも大きいという。実際、3月に学生募集の停止を発表した恵泉女学園大(東京・多摩市)も定員割れが続いていた。同大は定員充足率が55.2%で、昨年時点で同水準の大学は30校ある。

■2022年度の大学進学率は過去最高を更新

日本私立学校振興・共済事業団の調査でも、入学定員割れしている4年制私大の割合は47.5%(2022年)だ。しかし、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は「少子化=経営難になったのではない」とし、本当の問題は別にあるという。

「少子化になっても、高卒の就職者や短大・専門学校の進学者が減り、大学進学率は年々増加。2022年度の大学進学率は56.6%で過去最高を更新しています。定員割れとは、1人でも足りなければ該当しますから、定員割れのすべての大学が危機的な状況ではありません。今回の改定で、文科省の審査の甘さが露呈したとともに、私大は“民間企業”ですから、見通しの甘い民間企業がたくさんあることも分かりました。これが問題です。2000年以降、募集停止・廃校になった大学は16校ありますが、うち6校は開学から10年未満。進学を希望する学生や親は私大の経営状況の見極めも大事になってくるでしょう」

石渡氏は、廃校になる大学が出てくる一方、新規参入は増えていくとみている。前出の調査によれば、入学定員割れしている私立短大は85.7%に上る。

「短大自体は減っていきますが、生き残りをかけて4大に昇格させるケース、そして医療機関が人手不足の看護師や理学療法士などを育てる大学を新設する動きが活発になっています。10年後には7割近い高卒生が大学に進学していてもおかしくないですから、大学自体のニーズはあるわけです」(石渡嶺司氏)

まもなく、入学希望者が定員総数を下回る「大学全入時代」に突入するとされるが、学校選びは慎重にしたい。